私は彼に愛されているらしい2

前回もこの手で秘密の計画を話してしまい、揚句舞の前でからかいのネタとしてばらされたのは先週の話だった。
今回も聞き出しては本当に笑うに違いない。

「気持ちだけ貰っときますね。」

「あはは!つれないねー。」

この腹黒さを知らない外部の人間は王子様だなんだと彼を美化して羨ましいと近くにいる有紗に冷たい視線をくれるのだ。

迷惑な話だと有紗は舌打ちをした。

「おはようございます。」

いつの間にか時間が経ち続々と人が出勤し始める。朝イチの打ち合わせの準備を進めるべく有紗は黙々と作業に取り掛かった。

机の上にはスケジュールが書かれた卓上カレンダーが忙しさを物語っている。次の設計図面提出まで少しの余裕もないのだ。

週末のあの事件のことはなるべく考えないようにする。せめて仕事の間は仕事に集中しよう。

そう割り切って取り組むと集中力が有紗を救って無心になれた。

案外あいつも酔っぱらってかけたことを覚えていないのかもしれない。

いつものように時間が経って飲みに誘われて、また今までの関係が続くのかもしれない。

いや、きっとそうだと言い聞かせた。その確信が欲しくて同僚に酔っぱらった時の記憶があるのかどうか聞いてみたら「ある時はあるけど、ない時はない。」というベタな回答をいただけたのだ。

そう。ない時はない。

それで行こうと気合を入れたら少し気持ちが楽になった。あとは相談相手のいない1週間を乗り切れば大丈夫だろう。彼女たちがいない分、回せる筈の仕事は全部自分でやらなければいけなくなる。迫りくる締切も合わせてめまぐるしい日々になりそうだ。

自然と残業にもなるし、そうした方が疲れて余計なことを考える前に寝てしまうだろう。案外悪くないサイクルになると忙殺されそうな日々に初めて有紗は感謝の気持ちを持った。

「持田さん、行くよ。準備は?」

「はい。出来ています、東芝さん。」

頷いて歩き出した東芝に続いて有紗も打ち合わせに向かって歩き始める。

忙しい1週間が幕を開けた。