私は彼に愛されているらしい2

「…うっ。」

暫く触れられていなかった柔らかくて繊細な部分を撫でて貰えたようで、ロッカールームに辿り着くなり有紗は座り込んでしまった。

抑え込んでいた涙が溢れ出て止まらない。

声を殺して、それでも我慢することなく出てくる涙は流し切ろうと思った。

泣こう、辛かった分泣こう、それで気持ちを切り替えたらいい。

まるで沢渡に頭を撫でて貰っているような感覚になりながら有紗は自分の思うままに泣き続けた。

大丈夫。化粧ポーチはここにある。

大丈夫。暫くは誰もここには来ない。

大丈夫。これで終わりな訳ではない。

大丈夫。大丈夫。

どれだけ時間が経ったか分からない、有紗は許される限り自分を慰めてやろうと焦らなかった。

ここまで大きなことをしてしまったんだ、さらに怒られる要素があっても自分的にはもう一緒だと胡坐をかくようにまでは回復しただろうか。

ある程度気持ちが晴れてくると今までの自分を忘れる様に洗顔をしてから化粧をやり直した。

なんの武装だろうか。不思議なものでメイクをすればするほど気持ちが仕事の方へ向かって行くのを感じる。

「…よし。」

ここは会社、仕事をするために来ている場所だ。

ここは有紗にとって戦場、女だからだと舐められないように気を張ってきた戦いの場所なのだ。

「行くぞ。」

気合を入れる言葉を鏡の中の自分に投げかける。

まだ気持ちは完全に戻ってきてはいない、それでも強引に強気な笑みを浮かべて有紗はロッカールームを出ていった。