私は彼に愛されているらしい2

「でも肌身離さずに持つこと。」

「え?」

「それが大輔くんへのケジメだから。チェーンにでも通してネックレスにしてるといいよ。家に置きっぱなしにしてると有紗の気持ちまで置きっぱなしになるからさ。それって何か違うでしょ?」

「…そっか。」

まだ薬指についたままの指輪に触れて有紗は少し考えた。

ケジメをつけること、自分を取り戻すことの意味を少し分かったような気がする。

逃げる事じゃないのだと朱里に教えられて有紗は瞳に力を宿した。

「分かった、ありがとう。」

今日初めて笑顔で言葉を交わせたような気がする。

朱里が微笑んだのを機に2人はすっかり冷めてしまった料理を食べ進めることにした。

沢山歩いて、沢山買い物をして、寝る間を惜しんで話をして。朱里と過ごす時間の楽しさは学生の頃以上だと有紗は存分に満喫した。

名残惜しい気持ちを何とか抑えて帰ったのは明日の仕事に支障をきたさないギリギリの時間だ。

有紗は大輔に距離を置きたいということを伝える為、大輔に電話をかけた。

夜が深まる手前の時間、今までのことの謝罪とこれから距離を置きたいという希望を言葉少なく大輔に伝える。

「分かった。」

了承の言葉だけで大輔からその理由を尋ねられることは無かった。

ああ、やっぱり。

有紗の中で朱里の言葉が思い出される。

「大輔くんだって気付いてる。」

大輔はずっと気付いていたのだ。

大輔の顔をまともに見たのは一体いつだっただろう、有紗は逃げてばかりいた自分が申し訳なくて涙が出そうになる。

そして2人の連絡はそれを機にしばらく途絶えることになった。