私は彼に愛されているらしい2

裏と表が作られていく自分に何かが失われていく間隔。

結局満足する物件に巡り会えたものの賃貸契約まではいかず、悶々とした気持ちを抱えて2人は有紗の部屋に戻ってきた。

疲れた、その一言につきるがあえてそれは口にはしない。

「珈琲でもいれるね。」

真っ先にキッチンに向かった有紗はそのまま準備にとりかかった。

一息つくには温かい飲み物が一番だろう、そんな思いで作業する有紗を見る大輔の表情は険しい。

「有紗、今日の部屋どう思った?」

「うーん。いいと思ったけどね。」

「何が気になった?」

「そうだな、何かって言われたら難しいんだけど。」

「有紗、こっち向けよ。」

怒鳴るに近い強さを含んで大輔は有紗を制した。驚き反射的に体を揺らした有紗の手の中で陶器が音を立ててぶつかる。

有紗は大輔の方を見ると射抜くような視線が待ち構えていた。

ヤバい、その一言を胸の内で呟くなり居たたまれない気持ちになって逃げ出したくなる。

「今日やっとだな、俺の方見るの。」

見透かされた大輔の言葉に有紗の体が跳ねた。

怒っている、むき出しになった大輔の感情を目の当たりにして有紗は何も言えない。

「ちゃんと真剣に考えろよ。2人のことだろ?なんだ今日の態度、営業も困ってたじゃねえか。」

今日付き添ってくれた不動産の営業マンが脳裏に浮かぶが確かに顔がひきつっていた。

それは暗に自分の振る舞いがさせたものだと分かり苦々しく目を細める。