私は彼に愛されているらしい2

舞の言葉に驚いて有紗は顔を上げる。有紗の様子に戸惑った舞は慌てて手を振って焦り出した。

「やだ、冗談よ?ごめん、あんまり言っていい冗談じゃなかったね。」

「あ、…いえ。大丈夫です。」

ばつが悪そうに視線を泳がせる舞は流石に言葉が見付からないようだ。

いつもならすぐに話題を変えられる有紗も引っ掛かってしまった言葉なだけに反応が鈍い。

婚約破棄なんて言葉にここまで反応するなんて今まででは考えられなかった。そんな2人の間に挟まれる形になったみちるも心配そうに有紗の様子を窺う。

何とも言えない沈黙が3人を包み、居心地の悪い空間が出来上がってしまった。

「ま、まあ前進して良かったじゃない。ますます仕事に励まないと今週から忙しくなるからね。」

どうにかしようと責任をとった形の舞の声は気のせいではなく上擦っていたように聞こえる。

そしてその言葉に有紗もこれからの日程を思い出し深く頷いた。

「そうですね。」

「私も中盤から ヘルプで入るように言われました。」

同じ様に思い出したみちるが追いかけて言葉を乗せる。

「あら!みちるもいてくれるなら心強い!」

これからは仕事も佳境に入り終電に駆け込む日も多くなるだろう。

何より他部署との調整に神経を使う時期で体力的な問題だけではないのだ。

そんな時に余計なことを考えたくないのだと人知れず有紗はため息を吐いた。

マリッジブルー、婚約解消、その2つの言葉が頭に焼き付いて離れない。

それが逃げになるのか縛りになっているのかも判断がつかないところまで心は曇りきっていたのだ。

そしてバレンタイン当日を迎える。