私は彼に愛されているらしい2

「有紗?お疲れさま。」

大部屋に入るなりコートを羽織ったみちるとすれ違い目を丸くする。

「みちるさん!?いま帰りですか?」

「そうそう。長引いちゃってね。有紗はまだやってくの?」

「いえ。片付けたら帰ろうかと思ってます。」

少し首を傾げて尋ねるみちるの空気に癒されて自然と気持ちが柔らかくほぐれていくのが分かった。

会えて良かった、みちるの笑顔でさっきまでの嫌な感情もまるで無かったかのように心が軽くなるのだ。

「じゃあ、乗ってく?」

「え?」

「家まで送ってあげる。何も予定が無いんだったらガールズトークしよ。」

親指を立てた両手を上下に振りながら誘う姿は実にひょうきん、それは気を遣わせないようにするみちるのやり方かもしれないが有紗は見事に引っかかってしまったらしい。

「はい!ありがとうございます!」

弾けるような笑顔と元気な声はみちるを笑顔に誘う。有紗はすぐに片付けに取りかかりいそいそと荷物をかき集めはじめた。

「もっちー帰るの?」

少し離れた場所の端末にいた沢渡が背もたれに体を預けながら覗いてくる。いつもなら少しでも手を止めるところだが今日は少しだけ視線を合わせる程度にした。

「はい!お疲れ様でした。」

「もう遅いよ、送ってってあげよっか。」

「みちるさんと帰るのでお気持ちだけで!ありがとうございます。」

断りを入れる有紗の向こう側で会釈をするみちるの姿が目に入り沢渡も同じ様に会釈を返す。

「ロッカー行ってきますね!」

「急がなくていいよ。」