私は彼に愛されているらしい2

「周りが見えているのも分かるけど、本質を見抜けていない。」

「本質、ですか?」

「裏を読めるようになれってこと。このままじゃ潰される。」

まっすぐな眼差し、強い言葉に有紗の心が射抜かれ思わず息を飲んだ。

「その年齢や立場に応じた適応能力を備えていないと自立出来ないぞ。仕事でもプライベートでもそうだ。俺の言葉を信用して受け入れてくれる持田さんにだから言う。」

「はい。」

「持田さんにとって本当に信頼できる人間を考えてみな。浮かんだそれ以外の奴には疑う心を持った方がいい。」

やはり東芝の言葉は何にも邪魔をされずに有紗の心の奥深くまですぐに下りてきた。

その言葉の意味の深さをどこかで感じ取っているようですぐには返事が出来ない有紗がいる。全てをすぐには理解出来なくても、宿題にすべき大事な言葉なのだということは分かった。

疑う心の意味は。

「…はい。」

抱えきれない宿題を貰ったようで戸惑うってしまうが絶対に必要なことだって感じている。

その有紗の気持ちが伝わったのか東芝が頷くのが見えた。

「あとこれ、図のアングルが悪い。やり直し。」

「…はい。」

有紗は視線を横に流すと明らかにさっきとは違う声質で同じ言葉を繰り返した。

やはり鬼だ。でも真髄を突く鬼。

本質を見抜く疑う心、その言葉はその日ずっと有紗の中で重く心に住み着いてきた。

そしてまた携帯が鳴る。