私は彼に愛されているらしい2

憎まれ口も相手をしてくれているのだと分かっているから自然と顔が笑ってしまう。

肩を竦めて有紗の報告書に目を通す東芝を見つめていると少し離れた場所から声がかかった。

「失礼しまーす。持田さん、これ社内便受けに入ってたから持ってきたよ。」

少し強めの香水が鼻を掠めるだけで声を聞く前に誰が近付いてきたのか分かる。

庶務やらなにやらと雑務を担当している西島が片手に封筒を抱えて笑顔を振りまいていた。

「わ、ありがとうございます。西島先輩。」

「あと、これお裾分け。よかったら東芝さんもどうぞ。」

書類の束の上に乗せてあった箱からいくつか取り出して有紗の手の上に置いていく。箱を見なくても包みだけでそれが何かすぐに分かった。

「わ、チョコレート!ありがとうございます、先輩。」

目を輝かせ声を高くしてお礼を言うと優しい微笑みを残して西島は次の場所へと去っていく。その後ろ姿を見送ったあと有紗は手にしたチョコレートを半分東芝の方へ差し出した。

「はい、どうぞ。東芝さん。」

「いらない。」

「これ人気のチョコですよ?」

「いらない。」

報告書に目を向けたまま答える様子からチョコレートに興味がないのだと態度で言われているようだ。

甘いものが嫌いな訳じゃないことを有紗は知っている、今は気分じゃないのだろうかと首を傾げながら差し出した手を自分の方へと引き戻した。

「そうですか?じゃあ私がいただきますね。西島先輩はいつもお菓子くれるんですよね、優しいな。」

幸せなため息を吐きながらぽつりと呟くと東芝が怪訝な表情で有紗を見上げてくる。

「本気で言ってる?」

「え?」