私は彼に愛されているらしい2

自分でも分かっていることを滲ませながら答える有紗に東芝はどうしようもないと軽いため息を吐く。

そしてペンのボタンをカチリと押してペン先を収め、有紗をまっすぐ見つめた。

「持田さんが俺を好きかどうかなんて少し考えたら分かると思わない?嫌いな奴の下で君は穏やかに仕事できる柔軟な人?」

思ったよりもいつもの調子の言葉だったが、いつも通り東芝の言葉はストンとまっすぐ有紗の心に降りてくる。

視線を上にして少し考えると有紗は首を横に振った。

「いえ。」

過去を振り返ってもそうじゃなかったから全然仕事の能力が伸びなかったし足踏みばかりしていたのだ。だからこそ東芝や舞との出会いに感謝が深かった。

「ついでに言うと、さっきみたいな質問を堂々と本人の前で言えることから恋愛対象としては見てないことが分かるけどね。」

「あ、確かに。」

目から鱗だと表情で返す有紗に東芝は大きなため息を贈った。

そして改めて手元の報告書にとりかかると一人すっきりしたようにご機嫌な有紗へ言葉を投げる。

「昨日から感じる妙な視線はそれが原因?」

はっきり言って混沌の中にいた昨日のことは覚えていないが東芝が言うのだからそうであろうと有紗は申し訳なくなった。

「あはは。はい。」

「まあ誰に吹き込まれたかは想像つく。」

「分かるんですか?」

驚きの言葉に思わず立ち上がるが東芝は視線さえも上げようとはしてくれない。しかしこれもいつもの姿だった。

マグを置いて東芝の横に行くとようやく顔を上げて答えてくれる。

「ったく。仕事はミスしてないだろうな?」

「は、はい!気を付けています!」

「本当かよ。」