私は彼に愛されているらしい2

東芝のことが好きなのだろうか。

「なに?」

「え?」

下を向いたまま声を出した東芝は顔を上げてもう一度有紗に言葉を投げた。

「さっきから視線がいたい。ミスでもした?」

どれくらいの時間か分からないが、東芝が気になるくらい有紗はずっと見ていたらしい。

「あ、いいえ。ちょっと考えごとを。」

「考えごと?」

何かまた問題を抱えているのかと綺麗な顔が苛立ちを含んで歪む。

「東芝さん、好きなのかなって。」

「…ああ?」

言葉の意味を処理するに有した数秒の間を置いて東芝がドスの利いた声をもらした。大多数の人が足を竦める睨みを利かせるも、自分の世界に片足を突っ込んでいる有紗は動じず変わらない表情でみつめている。

駄目だ、正常な状態じゃない。

なんとなく状況を読んだ東芝は盛大なため息をつくと呆れた声で答えた。

「それは自意識過剰な話?食い物や趣味の話じゃないんでしょ、またその辺のおっさんたちに吹き込まれたの?」

一緒にいるようになってから特に大きな問題を起こさなかった2人の仲は上の方では良いからかいのネタになっている。

どうせまたそんな類だろうと手元の報告書をめくりながら東芝は作業を進めることにした。

「え?ああ、違いますよ。東芝さんが私にじゃなくて、私が東芝さんを、です。」

「はあ?」

今度は間抜けな声をあげてきれいな顔が歪む。しかし有紗はまたも動じず変わらない表情でみつめていた。

駄目だ、今回は面倒くさそうなレベルで正常じゃない。

ため息を吐く労力も惜しくなり、東芝はこれ以上にないほど目を細めて頬杖をついた。