私は彼に愛されているらしい2

とにかく今は1人になって考えたい、その一心で有紗は家へと向かって進む。

部屋に入って見える景色もほんの数カ月で大きく変わってしまったような気がした。

物理的なものも少しはあるが多くは違う、きっと空気なんだと玄関から部屋を眺めてぼんやり思った。

「大輔、か。」

声にした途端に降りかかってきた疲労感の様なものには気が付かないフリをして有紗は寝室へと向かう。

その途中で頭に響いた記憶の声に動きを止めた。

「きっと有紗も心の深いところでは俺が好きだったんだ。」

そしてその言葉に被るように沢渡の声も響く。

「もっちーは東芝さんのことを好きなんだと思ってた。」

途端に全身から力が抜けて有紗は床に座り込んでしまった。

何ということなのだろう、だとしたら自分の選択は間違っていたということになる。

有紗は不安に駆られて両手で口を覆った。

「…だから?」

震える声で呟くと目が忙しなく泳ぎ始め呼吸さえも乱れ始める。

だからなの?

「東芝さんが好きだから彼氏が出来なかったんじゃないかってさ。」

だとすれば、そう考えるだけで全身が震えた。

考えたくないことが頭を過り、ここぞとばかりに決定づけようと悪い方向へ向かっていきそうで怖い。

視線をさ迷わせば床に置かれたままの雑誌が目に入って有紗の思考を止めた。

それはフリーの賃貸情報誌、賑やかな表紙には新婚さん向けと大きくかかれている箇所がありやたらと強調されているように感じた。

その言葉を見るだけで重くのしかかる何かに心が濁る。