私は彼に愛されているらしい2

「もっちーは東芝さんのことを好きなんだと思ってた。」


沢渡から言われたことが耳に残って暗示にかかりそうになる。

もしかしたら、長い間彼氏ができなかったのは東芝のことが好きだったからかもしれない。

東芝の下につく随分と前から彼のことは知っていた。とにかく端正な顔立ちで黙っていれば王子さまの有名人だったからだ。

ずっと遠くから見ていて憧れていたのだろうか。

考えれば考える程答えが埋もれていきそうで抜け出せなくなる。

定時付近まで引っ張ってしまったモヤモヤは見事に仕事を停滞させてしまった。東芝の顔を見るたびに深層心理を確かめたいと何も手が付かなくなりそうなのだ。

「すみません、今日は上がります。」

有紗の申し出に東芝は目を丸くさせると時計を見てさらに驚いて瞬きを重ねた。

「…珍しい。何かあった?」

「いえ。」

「帰っても大丈夫な状況?」

「明日早く出てくれば挽回は出来ると思います。」

幸いにも期限が迫っているものは無い、少し自分の中で考えようと有紗は仕事を切り上げることにしたのだ。

「分かった。いいよ、お疲れ様。」

「ありがとうございます。お先に失礼します。」

頭を下げると手際よく片付けをして有紗は帰り支度にとりかかった。

「あれー?もう帰りー?」

「はい。お先に失礼します。」

君塚の言葉にも早々に有紗は更衣室へと向かう。その姿に首を傾げるのは東芝も同じだった。