あの日のメロディ...

「初見で弾く?」



一清が私の顔を覗き込んで聞いてくる。


「初見でやってみるか。」

私は元気良くそう言うと、一清はわかった、という代わりに頷いた。


「....3、4」


♪〜♪〜♪〜


2人共、勢いよく弾き始める。


途中つっかえるところはあるものの、なんとか最後まで通すことができた。




曲が終わると一清がガタッと隣の椅子を立ち、私の方へ近づいてきた。



後ろから上半身を重ねるように楽譜を指差した。


「ここのリズム...ユニゾンだから合わせような?」


「うん、わかった..。」


「それから、この部分はもう少しなめらかに」


「は、はいッ」


私は、一清の指摘より一清が上半身を重ねるように楽譜を指差していることが、まるで一清に抱きしめられているように感じて気になってしまっていた。