私が高校生のとき、この音大のピアノ科に入らないかと誘ってきたのは紛れもなくあの一清で.....。
でも先輩という立場上、呼び捨てには到底できなかった。
距離も段々遠くなっているようにも感じたのだった。
ピアノ教室に到着すると、私と一清が先生に呼ばれて別の教室に行った。
「藤田くん、灯川ちゃんッ!!見て見てーッ」
若い女の子のようにきゃぴきゃぴした女の先生が教室の中にあった2台のピアノを指差す。
私と一清は「え?」と言って固まる。
もしかして...これは..
「2人にこのピアノを使って、連弾してもらおうと思ってッ!!」
「連弾.....すか..?なんで叶愛と?」
一清が先生に問いかける。
「藤田くんと灯川ちゃんっていっつも息ぴったりじゃないッ!!だから、連弾させたいなって先生たちの希望よ!!」
希望って...
私は心の中でつぶやいた。


