それに気づかれないように、ちょっと深呼吸をする。


「綾香ちゃん、私そろそろ帰るね。また来てもいいかな?」


「うん!また会いに来てね!!」


彼女の横で優しく微笑むお母さんに頭を下げて、私は病院を飛び出した。




自然に歩みは早くなる。

和希くんが迎えに来てくれてると思うと走り出してしまいそうになる。


慌てて曲がった最初の角の最初の電柱の影、灯りはじめた外灯の下に彼はいた。


本当に迎えに来てくれたんだ。


私の姿を確認すると、何も言わずに家の方向に歩き出す彼の後姿を追って、遠慮がちに横に並んだ。


「ありがとな」


小さく言われた言葉。
照れたような表情。

それは私には十分すぎるお礼だった。