「うん!だってね、あそこの本棚に置いてあるから、綾香何回も読んだんだよ」


私はすかさず本棚に移動して、大好きな作家の作品を確かめる。

それはたしかに彼女の作品だが、少し古いシリーズで、本自体も日焼けしてボロボロだった。


後ろから追いかけてきた綾香ちゃんは、私が持っている新刊を羨ましそうに眺めている。


「ねえ、おねえちゃん、その本貸してくれる?」


"おねえちゃん"って言葉がちょっとくすぐったいけど、私は笑顔でうなずいた。


「いいよ。1巻から全部持ってくるね。明日来ても大丈夫?」


彼女は嬉しいのか、首を縦に何回も振った。

私も嬉しくなって、彼女と指きりげんまんをして、必ず明日に届けることを約束した。