「じゃあおやすみ」


そう言ってからも、和希くんは少し迷うようにしばらくドアの前に立っていた。


もしかしたら、私が出てくるのを待ってくれていたのかもしれない。

だけど、涙でぐちゃぐちゃな顔で出て行けるわけがないし、顔を見るのも怖かった。


自分の感情も怖かった。

自分が自分でないような気がして。



私、こんなに嫌な子だった?

自己中で、泣き虫で、駄々っ子で、天邪鬼……。



──風が雨を窓に叩きつけて、それがなぜだか波の音に聞こえた夜、私は恋の本当の痛みを知ったような気がした。