「ピタゴラスって知ってる?」


「え?なんか聞いたことある。数学で出てくるよね?」


ここまで話してやっと和希くんは私の方を見た。


「そう。ピタゴラスは数学者でもあり、音楽家でもあるんだよ」


「へぇーすごいね!両方の才能があるなんて」


パタンという音がして、太いハードカバーの本が閉じられる。

彼は私の前に転がってボールペンを手にとって、それをクルクルと器用に回す。


「いや、違う。数学と音楽は同じ学問だったんだ」


えええ?全然違うと思いますけど?