「それをわざとする場合もあるんだ。緊張感のある曲はね」
その話を聞いて、今まで私が聞いてきた演奏を思い出す。
……たしかに、緊張感のある曲を聞いたときってすごく疲れてたような気がする。
「だけどどうだろう?今回の曲は」
私は恐る恐る彼女の表情をうかがった。
彼女は下唇を噛んで、ぐっと何かに耐えているみたいだった。
「……ありがとうございました。失礼します」
そして、少し震える声で彼女はそう言って、早足で私たちの前から立ち去った。
「佐々木さん」
夕闇に消える彼女の後ろ姿を目で追っていると、先生に名前を呼ばれ、私はまた少し緊張感に包まれる。

