何の心構えもしてないぞ、私。


いきなり固まった私を見て、大ちゃんは「とりあえず飯食おう」と食堂へと誘った。

だけど、さっきまで空いてたはずのお腹からは一気に食欲がなくなって、緊張感で満たされる。


「最初の合奏は全員だから心配すんなよ」


「いや、緊張するよ……」


私と木下美波だけの戦いじゃない。

ここにいる全員がライバルになるんだ。


「よっしゃーーー!!」


「え、なに?!」


「気合入れただけ」


「……あっそ」


今日の合奏、明日の肝試し。


勝負の夜が始まる。