「佐々木さん」 「え?」 木下美波が小声で話しかけてきたので、私は思わず身構える。 「顔、にやにやしすぎ」 「……!!」 ……いい加減自分が嫌になってきました。 そんな私を彼女は見向きもせずに、コンサートマスターが言った言葉をおしとやかな字で譜面に書き記した。 彼女はこうやって書いた注意のメモを次の演奏でちゃんと修正する。 素直にそこはすごいところだ。 「ねえ、佐々木さん」 練習が終わって帰ろうとする私をまた木下美波が呼び止めたから、今度こそちゃんと身構えて少し距離をとった。