「──だから、何も進展していないわけでして……」 「そうかな?」 「そうかなって?」 汗をかき始めたグラスから落ちる水滴に気をつけて、慎重に口元へと運ぶ。 「いい感じだと思うけど」 「どのへんがでしょうか」 どのあたりでりっちゃんの"いい感じ"アンテナが働いたのかまったく理解できない。 「和希くん、笑うようになったし、柔らかくなったよ。陽菜ちゃんに対して」 「……」 そう言われてみれば、さっきも────