一番会いたくない、と思っていたはずの男が廊下を歩いてくる。 普段なら無視して教室に入るくらいできるが、今は俺の足がそうさせない。 全身がバカみたいに熱くなって目線が上がらない。 こんなの初めてだ。 俺は顔を上げ、陵に目線を合わせた。 「陵、おはよう」 すると陵は一瞬驚いた顔をして、変わらない笑顔で言った。 「おはよう。足、大丈夫か?」 「……ああ、まぁ」 「そうか」 何ドキドキしてんだ俺!