ウシロスガタ 【完】

「はぁ…今日も、これから仕事だぁ~」


「……なよ」


「なに?」


「行くなよ、店……」


「えっ??」


2人の間に沈黙が走り、


俺と冷夏は2人とも視線を反らさなかった



「な~んちってな、冷夏ファンが泣いちゃうよなぁ~!!」


「えっ?あ、うん…行かなきゃ」


「行くのかよ?」


「うん…」


「行かせたくねぇ~の!!」


「さとクン……」


「でも行って来い!!仕事だもんな…」


俺が冷夏の方を向くと、
冷夏はボーっとしていた



「冷夏??」


「あっ、ごめん…」


「頑張ってこいよ!!」


「うん、行くね」


「おう!!」


俺は立ち上がる冷夏を見上げた



冷夏とバイバイする時が1番不安で、



怖かった…



俺達の間に次会える約束なんてなかったから…




「じゃぁなっ!!」


そう、笑顔で言ったつもりの俺は、



ちゃんと笑えてるのだろうか……



この前のように、


甘い香りだけをほんのり残して



冷夏は車に乗り込んだ



俺の隣に並ぶには
不釣り合いな冷夏……



でも、冷夏といると、


冷夏と話をしていると、



そんな気持ちが嘘だったかのように消えてなくなる




離したくなんてない


男が沢山いる未知の世界へ



冷夏を俺だけのものにしたい…



そんな事なんて出来るはずがないのに



俺はだんだん、贅沢になっていった



冷夏がいなくなってからも、その場所から離れられずにいた