ウシロスガタ 【完】

しばらくするとパチ屋の前に1台のイカツイ車が止まった

――♪♪~♪~♪――



《着いたょ~》



冷夏からのメールを見て俺は
心を痛めた



“ハートマーク”



今まで俺はメールのハートマークを
一度も使った事がなかった


気軽に使えるマークじゃない
気がして



使った事なんてなかった



だけど俺は冷夏とのメールの
やり取りの中で初めて使ったんだ



けして軽い気持ちじゃなく俺は冷夏にだから使えた



そして冷夏からのメールでも
ハートマークがたまに使われてた



それがまた俺をドキドキさせたんだ




でも、さっき間違えて送られてきた冷夏からのメールを
見て




俺はそんな小さな幸せも



ハートマークにドキドキした事も



俺の勘違いだって事を
簡単に思い知らされた




俺はそんな事を考えながら冷夏に急いで返信をした




≪着いたってどこ?≫


≪パチ屋の前だよ!!≫


≪俺もなんだけど…≫



そう、返信した後イカツイ車から1人の女の人が出てきた




「冷夏……?」



私服姿の冷夏を見て、店にいた人物とは違う人かのように見えた



「久し振りっ!!」



そう笑顔を見せた冷夏に俺の心臓の音は高鳴り、



さっきまでの苛立ちがまるで嘘かのように、俺は冷夏から目が放せなかった



「また、ちげーなぁ~ドレス姿とはよ!!」



「あっ、うん。かなりね~!!」




あんなにも会いたかった冷夏が目の前にいる



俺は硬直して、何を話していいのか分からずにただ冷夏の事を見つめていた



店の中に居た時は、
本当に手の届かない女に思えたのに



こうして、未知の空間ではない所で見る冷夏は



少しだけ手が届きそうな気がした