ウシロスガタ 【完】

「おい!さと、お前…何処いくの?」


「あ…いや、帰るよ…」


「あっそ、変な奴!!やっぱりお前、最近変だわ…」



「………。」



「さと?またメールかよ?じゃぁな!俺はバイト行くわ」



「あぁ……」



「なんだよ、携帯なんか見つめて…。おい?聞いてんのかよ!!」



「あ?なんだよ…?」



「なんでもねぇよ!!今度は機嫌わりぃーし、じゃあな!!俺は行くよ」




中西の声なんか、今の俺には遠くて全然耳になんて入ってこなかった



俺はただ、



中西が話しかけてきた時に入ってきた



1通のメールを見つめ



そして



携帯を力いっぱい、おもいっきり閉じた。



――バコッ!!!――


パチ屋を出ると近くにあったゴミ箱をおもいっきり蹴り飛ばした



「くっそぉ~!!」



俺はさっき受信されたメールをもう一度見た



《仕事終わったんだぁ
お疲れ様冷夏はこれから仕事だよ行ってきます》


そのメールは冷夏からのものだった



俺に送られてきた訳じゃない



冷夏は誰かと間違えて
俺に送ってきていた



「…っ!!ふざけんなよ」



今までの冷夏との幸せな
メールのやり取りの日々が…



一瞬で打ち消された気がした


たった間違いの一通のメールだけで……



俺の心に痛みが走った