走馬灯のようによみがえる記憶……。


その記憶を辿りながらも、俺は今日もここで夜を迎えている。


この場所にいると、またいつものように、冷夏の車のライトが冷夏の存在を先に知らせてくれるような気がした。


ひとりでも少しだけ温かい気がするのは、冷夏がぬくもりを残してくれていってくれたからだろうか。





「あ?なに?聞こえねぇ……」



気がついたら、俺の耳元からそんな声が聞こえた。



知らずに自ら奴に電話をかけていたのだろうか。



その声からは迷惑をそうなしかめ面をしている中西が想像させられる。



「おい、なんだっつーんだよ」


「別れ……た」


「は?別れた?」


「ああ」


「なんでだよ、お前……」
「俺だけ、辛い思いをすりゃいいんだ」



「そんなのちげーだろ!!」
「アイツには幸せになってもらいたいんだ」



中西に負けない怒鳴り声で、言いきった後、耳から聞こえたのは大きなため息だった。



「お前、ばかだな。お前が離れて辛い思いをしないとでも思うか?冷夏チャンの今の幸せは、どこにあったんだよ!!」


「……」


「お前は結局、自分が傷つきたくなかっただけだろ?自分の幸せが不安になっただけだろ!!」


「……」

「情けねぇ、もう2度と冷夏チャンの名前だすなよ、こんな電話なら夜中にしてくな!!」



ツーツーと耳元で響く音が、俺をまた孤独にさせる。






冷夏の幸せ……

それは俺の傍にあったのだろうか。

俺と離れて本当に冷夏は苦しむのだろうか。

そんな事を考えながら、俺は真っ暗な部屋の中に戻ってきていた。