情けない男だ。

少しだけ、冷夏がすがりついてきてくれることどこかで信じていた。

あの時、俺の話しを冷夏が聞きたくないとでも返信してきたとしたなら、こういう結果にはならず、俺の気持ちは封印されていたのか。


もう少し、俺が我慢すればよかったのだろうか。


そんなこと今さら考えたって送ってしまったメールは冷夏の手元にあり、その返信が俺の元にあるっていうのに……



もう遅い……。

受け止めざるおえない現実は俺の手の中で小さな機械が伝えてくれている。


「冷夏っ……」


携帯を握りしめていた手は震え、俺は震えながら唇を噛みしめた。




夏真っ盛りだった

真っ白なロングドレスに身を纏い、俺の目の前に現れては、優しく微笑んだ。


“冷夏”


なぜだか、そんな名前とドレスが一致していて俺は思わず聞いたっけ?



『白好きなの?』



そんな俺の言葉に『白になりたいの!!』


そう笑いながら、俺の目を見て話してるつもりだっただろーけど、冷夏の瞳は俺を映し出してなかったのなんてすぐ分かったさ。



あの時『白になりたいってなんだよ~』なんてバカにしたけど、


冷夏?今になって分かったけど、お前は本当に白になりたかったんだよな。


ずっと、真っ白にさ。


だけどな


冷夏は白い世界に憧れてたかもしれないけど、俺から言わせりゃ、じゅうぶん白い世界の中にいる女だったよ。


黒い世界なんかにいなかった。



“白は何色にも染まる”


そんな言葉をよく聞くけど、そんな言葉は冷夏には合うことはないだろうな。


冷夏は何色にも染まらず、染めてくれたんだ。

俺の薄汚れてしまっていた心の中を白く塗りつぶしてくれたんだ。




お前に逢うたびに、心が綺麗に浄化されてるような感覚だった。


大切なこと


大切な気持ちを、ひとつずつ俺に埋めていった……

いつも子供みたいに楽しそうにはしゃぐお前は、きっとこれからも白が似合う女で、何色にも染まることはないだろう。




冷夏は誰にも染められない……