ウシロスガタ 【完】

窓を全開にし、心地よいとはお世辞でも言えない外の風を自分の部屋で感じる。




こんなことは前の俺には想像つかないこと。


ずっとカーテンと共に締め切りにされていた俺の部屋の窓は俺の心と同じだった。



それは、冷夏と出逢い


“冷夏と一緒にいた風を感じたい”


そんな想いから


この窓に手をかけ開けたと同時に心も完全に開く……。




冷夏という、ひとりの女によって簡単に開いた。



だけど、あの風を感じたいと思うにはもう冷たい……


出逢った頃の風を感じることが出来るのは、また一年後なのだろう。




過ぎ去って行く時間


誰にも止められないもの



外の風を感じながら、壁にかけられている時計を見つめていた。


こんな小さい機械のくせに、コイツには逆らえない。



冷夏と出逢い、部屋に響く秒針の音は、時に俺を悲しみに突き落とす物となり好きになれなかった。


ひとりで居る時間は俺をどんどん不安に落とし苦しみに変える。



この世の中に時間というものがなかったなら……



そう思いながら、



窓に近付き


窓をゆっくり閉めた。




もう二度と開けることはないだろう


鍵までかけ、暫く目を閉じた。