満たされぬ想い
葛藤
離れているだけで、色々な感情がこみあげてくる。
《なんか怒ってる?》
《なんも怒ってないよ》
怒り?
そんなもんじゃない。
それよりももっと深いなにかが、俺の中を支配しているんだ。
《翔クン、なんか変……》
「変なのは冷夏だろ!」
またひとり画面に言葉をぶつけながら、起きたばかりの体をそのままベッドに戻す。
薄暗い部屋の天井……
それはいつも俺の真実の姿を知っている。
いつからか、この空間にいる俺は冷夏ワールドに入りこんでしまったかのように、冷夏以外のことを全てシャットアウトするんだ。
この部屋で、
何度、ひとりで笑い
何度、不安になり
何度、喜び
そして、何度ひとり涙を流しただろう。
一度だけ、この空間に足を踏み入れた冷夏は、布団に香りだけを残し、
その代わりに笑顔で悲しみまでも置いて行った。
その悲しみや孤独と闘いながらも冷夏のぬくもりと香りを抱きしめ毎日眠った。
だけど、そのぬくもりも
香りもなにも残っていない。
しぶとく残っているのは悲しみだけ……。
考えれば考えるほど、俺は引っ張られて行く
暗闇の中に……
いつも冷夏のぬくもりだけをさがしながら……



