「んっ…?」
俺の視線に気付いた冷夏が照れ臭そうに俺をチラリと見た。
それでも俺は視線を反らすことなく見つめる……
「なぁに?翔クンってば~!」
そのまま俺の胸に飛び込んできた冷夏を抱きよせた。
「そんなに喜んでくれるとは思わなかった」
「だって、これで車の中でも同じ曲を聞けるもん!」
「本当に子供みてぇ~な奴!プレゼントあげて喜んだ子供だよ~」
「うるっさい!でも本当にありがとお……」
俺の顔を一瞬だけ見てふてったかと思えば、またすぐにしがみついてきた。
温かい……
冷夏のぬくもりは心までも温めてくれる。
冷夏の香りが、安心させてくれる。
このまま、ずっと……
目をつぶりながら、おもいっきり冷夏を感じていた。
「そう言えば、なんで電話焦ってたの?」
その一言に、さっきの光景がよみがえってきて、おもわず吹き出しながら笑えた。
「えっ?なに?」
「親父がよ、俺が風呂入ってる時に部屋で携帯握ってるんだもん」
「なに、それぇ~!」
「それが、冷夏の電話だったんだけど、俺が話してる途中小指立てながら『これか?』なんて言うから」
その言葉に冷夏までも吹き出し笑っていた。
「電話切った後、飛び出してきてなにも言われなかった?」
「えっ?あ、うん……」
そう、思い出していた……
『今日は泊まりか?』なんて嬉しそうに聞いてきた親父の顔を。