ウシロスガタ 【完】

いつもの場所へと車をとばしたが、俺よりも先に冷夏の車が停まっていた。



冷夏が車から降り、俺の車に向かってくる姿がサイドミラーにうつる。



何時間前に逢っていたはずなのに、またその姿に俺の心臓がリズムを打ち出した。



「ごめん!冷夏、これでもすげー急いだんだ」



「ぜんぜん待ってなんかいないよ、それよりその格好……」



そう、冷夏はちゃっかり冬服を着ているのに、おれは半そでにハーフパンツ。



そして、乾ききってない髪……


「だって、風呂に急いで入って、急いでとびだしたから!」


「なんで?」


「今日は、終わる時間にここで待ってようと思ったんだよ」



その言葉に不思議そうに、冷夏が首をかしげている。



「ほれ!」


赤と紫のMDをポケットから取り出すと、冷夏の手の平に乗せた。


「なに?これ……」


「アルバムの曲」


「えっ?とってくれたの?」


「まぁな、冷夏と違ってヒマ人ですから!」


「やったぁ~!翔クンありがとう!」


たかが、録音しただけのMD……


それでも冷夏はそれを見ながら大はしゃぎして喜んでいる。


そんな冷夏から目をはなせずにじっと見つめてた。