『でも、冷夏さ車じゃCD飛ぶから聞けないんだよね』



そうひとり愚痴をこぼしていた冷夏の言葉を俺は聞き逃さなかった。



そう、少しでも俺と繋がるものがあるならば……


少しでも、お互いが近くに感じていたい……。




そして、 俺を思いだしてくれるなら。




冷夏が行ったあと、俺はまだやっている店まで車を走らせ急いで買い物を終わらせ、家に勢いよく飛び込んだ。




「翔~!飯は??」




リビングの方から、親父の声がする。



「いらねぇ!!後で食うから!!」



そう言うと、すぐに部屋に入り込み、買ってきたものを急いで開けた。



“アイツはきっと喜んでくれるだろう”



冷夏のその姿を想像するだけで、俺の顔までもが緩んだ。



ーーコンコン!!--



「入るぞ!!」




入るぞ!なんて言いながらも、その言葉より先に俺の部屋に足を踏み入れてる兄貴……



一瞬、チラっと視線を投げ、俺はMDコンポの前に何も言わずに座りこんだ。


「おっ!?今日は拒否んないのか?」



なにかと、俺の行動を気にかけてくる兄貴は正直ウザイ。



だけど、この日はなぜか気持ちが穏やかで、冷たい言葉も、とげのある言葉もでてきやしなかった。


「10時46分か……」



時計に目をやり、俺は動きだした。



「お前、やっぱ最近ヘンだな……」



後から聞こえる兄貴の声に一瞬だけ振り返り『そう?』なんて、冷静を装ってる自分になぜだか笑えた。



「ああ、ヘンだ……」



なんの用事だったのか、その言葉を残し俺の部屋から出て行った兄貴を確認してはベッドの上に勢いよく転がり仰向けになり目を閉じた。