「じゃあ、行ってくるね」


「ふ~ん、頑張って!とは言わないよ」


「知ってるっ!」



一気に襲う不安……



冷夏をおもいっきり抱きしめた。



「大丈夫だよ……」


「信じてる」



俺の大好きな香りが、安心させてくれる……



「やっぱり、この匂い俺好きっ」


「えっ??」


「安心するんだ……」


「ぷっ!!ばかっ!!」


冷夏が顔を上げ、俺を見つめて、俺は冷夏を見下ろす……


「んっ?」


「チビだなっ!!」


「うるっさい!!」


初めて、冷夏を抱きしめた場所で、俺たちは抱き合う。


寂しさも、温もりも、不安もお互いに預けるように、



強く……



「よし!行って来い!!」


「はいっ!!」


いつもと同じように、冷夏の肩を掴み、クルっと回すと冷夏はゆっくりと自分の車に乗りこみ窓を開けた。



車の中から、俺たちを繋ぐメールの着信音と同じ曲が流れていて、冷夏はおもいっきり笑いながら手を振り、静かに車を発進させた。



それを見ながら、俺は手を挙げる……



「行くなよ……」



いつも同様、そう呟きながら、冷たくなった風をひとりで感じタバコに火をつけ車に乗り込んだ。



ーーピッ!!!--




俺の手は自然に曲を変えるをボタン押し、冷夏と同じ曲を流しながら、肺にためこんでいた煙を少しずつ吐き出し車を発進させた。



冷夏の香りが車の中に、まだかすかに残り……



それが逃げてしまわないように窓を開けるのをやめ、俺は家とは反対方向に車を走らせた。