ウシロスガタ 【完】

「冷夏ね、少しだけね後悔しちゃったんだ」


「んっ?」


もはや、俺の声さえも震えていて、冷夏にさえ届いているのか不安になるくらい、俺たちは涙を流し続けていた。



「ど…うして…、今頃に出逢ってしまったの?って、こんなことになるなら初めら……」



そこまで言うと、冷夏は口を閉ざした。



「たとえ、どんな形でも、俺たちは出逢うべき運命だったんだよ」



「運命……?」



「そう、出逢うべき運命……」



その言葉と共に、自ら離れた冷夏は俺の顔に手をあて、涙を拭いてくれて微笑んだ。



「泣いてるぅ~」


「うるっせぇ!!」




そう“出逢うべき運命”



きっと、俺も冷夏のそんな運命に後悔など二度とすることはないだろう。



辛く苦しい恋愛


絡み合う事のない愛なのかもしれない……



それでも、必死に繋がっている手。




ギリギリのところで一生懸命離さずに……




「あ、これいい歌じゃない?」


「だから、これが俺が1つ多く選ん1番だよ!」



「この歌いいっ!!!」


「真似すんなよぉ~!」



「してないっ!」


「これ、デビュー曲だから好きなんだよな」



それだけ言った冷夏は、歌に浸りだし俺の言葉など耳に入ってはいなかった。



「聞いてね~し」



これが、冷夏の運んできてくれる幸せ……



突然に、俺を笑顔にしちまう魔法の幸せ……。



「でも、冷夏さ車じゃCD飛ぶから聞けないんだよね」



ひとり、ぶつぶつ言いながら、最後まで、歌に入り込んでいる冷夏を、俺は目を離さずに見つめていた。