公園が近付くに連れて、俺は深呼吸を繰り返す。


話せるわけでもなく、
二人で逢えるわけでもない。


ただ、一目冷夏の姿を見るだけ。



「あっ……!」



俺の視線の先に冷夏の姿がハッキリと見えた。


「アイツ……」



俺の車に気付くわけでもなく、子供のブランコを楽しそうに押している。



たまたま公園の前の信号で止まった俺の車……



タバコにゆっくり火をつけ、窓を全開にして冷夏の姿を見つめ、やきつけた。



「気付けよ、バカ…!」



それでも俺は自然と笑っていた。



懐かしい冷夏の表情……



何日か前の居酒屋で逢った冷夏とは別人。



信号が青を知らせると、ゆっくりアクセルを踏みながら冷夏の姿を追った。



そして、バックミラーでまた後ろを確認した。


俺の心臓はドキドキしていて鳴りやまない……。


それと同時に、あの冷夏が大好きな曲が終わりを告げ、切ないイントロが流れ始めていた。



「マジ、切ねぇ……」



車の中で独り言を言いながら、また信号で止まった俺はメールを送った。



《冷夏、発見!!》


《最悪っ……車の後ろしか見えなかった》


《気づくのおせぇ~の!!》


そう、もう役に立たないを思っていた俺の携帯は、



再び、俺たちを繋いでくれた大切な大切なものとなっていた。



《ごめん……》


《でも、冷夏の姿見れて嬉しかった》


《自分だけ、ずるっ!》


そう、幸せなんだ。


欲ばらなきゃ、幸せなんて手の届くところにある。



贅沢にならなきゃ、

幸せをこんなにたくさん感じられる。