ウシロスガタ 【完】

どのくらい、こうしているのかさえ分からない。


ただ、冷夏が残して行っただろうマイルドセブンの吸い殻の隣に


俺のタバコの吸い殻も、どんどんたまっていっていた。


ここにいよう。


ここにいれば、冷夏のぬくもりを少しだけ感じられるから




ここにいれば、あの甘い香りの冷夏の香水の匂いが、
風と共に運ばれてきそうな気がするから……。




なんだか不思議と心が落ち着いていた。



――♪~♪♪~♪♪~♪――



「冷夏……」



もう役目が終わったかと思っていた俺の携帯が、


ピンクの蛍の点滅と共に、懐かしい音を奏で初めている


だけど、その音楽を聞き入るどころか急いでメールを開いていた。



《どうやって?》



そう《話しがしたい》それだけを送信した俺に、そっけない返信で冷夏は返してきていた。




《電話していい?》



俺は今までに、このメールを送ったのは2回目。




まだ何も真実を知らなかった、初めの頃に1度だけ入れたが、


それ以来、入れたことはなかった。



断られることが何より辛いから……



そして、むやみに電話さえできる関係ではないから。




《いいよ……》




冷夏からの返信を見てから俺の胸の鼓動は速さを増していた。



勢いで入れたメール……



俺は電話で一体何を話そうとしているんだろう。



頭の中は混乱するばかりで止まらない自分の速さを増す鼓動に苛立ちを感じながら、


また一本タバコに火を付けた。