ウシロスガタ 【完】

ーー送信しましたーー


その画面をただ、見つめていた。




不思議なもんだ、俺の代わりにこの小さな機械が冷夏に気持ちを伝える……



言葉に出来なかった気持ちも、伝えてくれる。



今まで、携帯というものの便利さなんて、あまり考えたことすらなかった。




特にメールなんて面倒臭いものは大嫌いで


時には理解に苦しむことあり、


メールには相手の表情も声のトーンも分からない……


たったひとつのメールが誤解を招く時もある。




だけど今となっちゃ、


俺と冷夏が唯一、朝まで繋がれていたもの。




もし、この小さな機械がなかったなら、俺と冷夏は繋がることすらなかったのだろう。




画面を見ながら、ただ返信が来ることだけを願い



俺は携帯を片手に持ち、タバコに火をつけ肺に入った煙をゆっくり吐き出した。




また、あの音楽は鳴ってくれるだろう……



再ピンクの蛍が光放って、メールを教えてくれるだろう……





冷夏のいない、昼間の二人だけの幸せな秘密の場所で



俺はずっと冷夏の姿だけを思い浮かべていた。