ウシロスガタ 【完】

「さみぃ~な!!つーかお前珍しくねぇ?朝から並んでるなんてよ」


「うっせーよ」



唯一、気を紛らせられる場所。


いや、違うな……


本当は、コイツの言葉を頼りに足を運んだだけかもしれない。



朝からテンションの高い中西は、俺の前に横入りしてタバコをふかし始めた。



俺も、なぜだか沈黙が保てず、タバコに火をつけゆっくり肺に入れた。



「ゲホッ、ゲホゲホ……」


そう、暫くタバコさえ吸うことを忘れていた俺は、むせかえり目まで潤んだ。




「お、お前なんだよ~風邪ならうつさないでくれよな?」



明らかに病気扱いをして、嫌そうな顔をしている中西に向けて煙を吹きかけた。



「てめぇ~は性格悪いんだよ!!」



「知ってる」



そんな俺を、睨みつけながらもどことなく優しい表情をしていた。



もう、コイツなら分かっているのだろう、俺の心の中を、今の状況を……。



「なぁ、中西?」


「あ?」


「お前だったらさ……」


「諦めねぇ……!!!」



“えっ……?”



その一言だけを残し、タバコを踏みつけ火を消してる姿を見て初めて目の前にいる中西がかっこよく見えた。