ウシロスガタ 【完】

「冷夏っ!!!!」



自分の声で飛び起きながら、辺りを見回すと兄貴が口を開けたまま俺を直視していた。



「夢っ……」



深い深呼吸をし呼吸を整えてる横で、腹を抱え大爆笑している奴がいて、一瞬で現実に引き戻されたと同時に我に返った。



「冷夏って、お前……アハハッ!!うけんな!!」



これほどに兄貴に殺意を抱いたことはない。



「それ以上、しゃべんなよ」




今は腹を抱え笑い転げている兄貴の相手さえもする元気もなく、



なぜ部屋にいたのか追及する気力もなく、



リビングでコップにめいっぱい水を注ぎ、一気に飲みほした。



「5時半か……」



時計のカチカチという音が静かなリビングに寂しそうに響き渡っている。



なんだか、今はその音が凄く心地いい……





「悪い夢でも、見たのかよ」




後から聞こえる声に深くため息をつき、俺はお風呂場へ足を運ぶと「ったく、機嫌わり~んだよ」と漏らした兄貴をおもいっきり睨んだ。






窓全開で寝ちまったせいか体が冷たい。




おもいっきり頭から温かいシャワーをかけ、




一緒に、静かに涙も流した。




“いっそのこと、全てを流しちまってくれよ”



そう願いながら、涙が止まるまでずっとシャワーにあたり続けていた。