ウシロスガタ 【完】

視線を感じたのか、冷夏は俺の方を見て精一杯の笑顔を作り笑っていた。



そんな冷夏を見た瞬間、俺の胸にとてつもない痛みが走った。



どうしていいのか分からない……



なにを話せばいいのかもわからない……



そして、なによりも自信がない。




ただ、今まで冷夏と過ごしていた時間の中でこんなにも時間が経つのが遅いと思ったことはなかった。




「なにか話した?」



どれくらいの時間をつぶしてきてくれたのであろう。



恵梨は戻ってくるなり、俺たちの顔を交互に見ていた。



「話してない……」



やっと口を開いたと思った冷夏の言葉はその一言だけだった。




「なにがしたいの?どうしたいの?」



さっきよりも、苛立ちを感じる恵梨に、俺は突っかかった。



「どうしたらいいのかも、わっかんね~んだよ!!!」



「はっ?なに?じゃあ、なんで来たの?好きだからきたんじゃないの?やり直したいって思ったから来たんじゃないの?」



「………」



「てゆ~か、意味がわかんない。割り切って付き合っていかなきゃ、2人の恋愛なんて無理でしょ?」



「俺は割り切ることができないんだよ!!」



「今さら、なに言ってんの?ずっと、そうやって続けてきたんでしょ?好きなら我慢するしかないでしょ?」




「だけど、限界だったんだよ!!俺はずっとは待てないんだよ」




「だけど、そういう人を好きになったんだから、多少は割り切らなきゃいけない部分もあるし、今すぐなんて無理なんだから待ちなよ!!」



「冷夏が……」



そう言いかけた時、冷夏は俺の方を向き、恵梨は鋭い目で俺を見ていた。