ウシロスガタ 【完】

あんだけ、冷夏と離れてしまったことで、俺の頭の中は冷夏という1人の女のためにフル回転していたはずなのに、



冷夏を失ってしまったということだけで、色々な感情が溢れてきたはずなのに、



何度も、何度も……



“もう1度だけ……”




そう願っていたはずなのに、



2度と逢えないかもしれないと思ったら、



“もう1度だけでいいから逢いたい”



そう思っていたはずなのに……。




冷夏を目の前にして、動きだした感情は“嫉妬”だった。




求めていた冷夏が目の前にいるのに、素直に気持ちを伝えたいってただその思いで、冷夏の階段を上る後ろ姿を見つめていた俺は、どこに行ってしまったのだろう。



今まで、ずっと苦しんできた嫉妬という言葉……



色々な男に対して



旦那に対して




俺はずっと苦しみ続けていた。




やっぱり、今またやり直したとしても、この気持ちは変わらず冷夏を苦しめ傷つけ、責めるだけなのだろうか……




目の前いる冷夏を抱き締めたいという気持ちより、俺はまた冷夏を責めることと、自分が苦しむことばかりを考えながら、顔を上げ冷夏を見つめた。