ウシロスガタ 【完】

《家にいるの辛くて外に出てきちゃった》


そのメールを見た瞬間に、メモリーから冷夏の名前を出し、通話ボタンを押そうとした。



だけど、そこから指に力が入らず、冷夏という名前のでている画面を暫く見つめていた。



冷夏に電話したところで、俺は何を言うんだろうか…。



また、自分の不安や不満をただぶつけるだけで、冷夏を苦しめるだけなのだろうか。




そんな、思いと、



“冷夏に逢いたい”


“もう1度アイツの傍にいたい”



自分の中で2つの気持ちが葛藤しながらも、俺は携帯を閉じていた。




きっと、冷夏も苦しんでいたのだろう。



ひとり、この場所で来ない俺のことを待っていて



メールの返事すら、来なくてどんだけ不安だったか……




それなのに、普段なかなか夜に外に出させて貰うことなんてないのに、



家を出て、俺にメールを入れてきた冷夏はきっともう、いっぱいいっぱいだったに違いない。




いつも強がる冷夏、『冷夏は大丈夫だよ!』そんな強がりな言葉を、何度も言わせてきた。



それでも逢ってる時は幸せそうに笑っている冷夏、



本当は人一倍寂しがり屋で、傷つきやすくて、弱いのに……




何でも、ひとりで抱えこむ。




そんな冷夏がメールしてくるくらいなのだから、よっぽど苦しんでるはずなのに……



俺はまた、現実から冷夏をひとり取り残し、逃げようとしている。





《どこにいるんだよ!》



俺は迷わず冷夏に返信をし、何十時間ぶりに車のエンジンをかけた。