冷たい……



風が、俺の心をどんどん寂しくさせる。



思えば、最近は冷夏の帰りを待ってることさえも、仕事が終わった冷夏と外で話すことさえもなかった気がした。



こんな冷たくなってしまった風が俺を振りかえらした。



目をつぶると、あの心地よい風に当りながら、抱きしめあってた頃が遠い昔のように感じる……



きっと、俺たちは大切な何かを夏の終わりと共に置いて来てしまったかのような……




気がついたら、空っぽになってしまっていた。



大切な大切な気持ちさえ、欲の塊に潰されてしまっていた。




「くっそっ!!」



俺は、部屋を飛び出し、車のキーを握りしめ、いつも使うエレベーターさえも乗らずに階段を駆け下り、駐車場に止めてある車に乗り込んだ。









そう、いつもすれ違う度にあの場所に来てくれた冷夏。



「あいつはいる……」



そう信じながら、猛スピードで車を走らせた。




このカーブを曲がれば、冷夏の車が停まっているはずだ……




時間を見ると“3時12分”俺は唾をゴクリと呑み、静かに曲がった。