ベッドの上に転がっている携帯を手に取り、電源を入れると再び蛍が光り始めた。




真っ暗な部屋の中で、本物のように上手い具合いに点滅している。




携帯を開いた瞬間あまりの眩しさに目を細めながら、



あえて新着メールを開かずに、今まで入ってきた冷夏用のフォルダーを開いた。




冷夏からのメールは全て、このフォルダーに移し、



眠れない日々や、寂しい時いつも初めから読み直しては笑顔になったり、心を痛めたりした。



初めの頃のメールは冷夏が必死で俺に嘘を付いてる




真実を知ったあの時は、頭が真っ白になり、大好きな冷夏さえも恨んだが、今になっては笑えるようにもなった。





1つずつメールを開いて行く度に、その時の俺の心の中も甦ってくる。






あの時の真っ直ぐな俺の気持ち……





あの時のまだ、欲なんてなかった自分の気持ちが愛おしく思えた。




メールを1つずつと見直していく度に冷夏の不器用な思いが伝わってくる。



捻くれて冷めてしまった冷夏の心も痛いほど伝わってきていた。




次第に増えて行く、1日のメールの数……



それは仕事の合間にさえ、俺の不安を気遣い入れてくれたメールもあり、



そんな冷夏の何気ない気持ちが今さらになって気づき、目から涙が零れ、途中で携帯を閉じた。




気づいてなんかやれなかった。


あの時の俺は不安すぎて、怖すぎて……


自分だけが辛い思いをしている……



そういつも思いながら、冷夏にひたすらメールを送っては返事を待っていた。



今さらになって気づくなんて、



本気で好きな女の健気な気持ちさえも、わかってやれなかった自分の情けなさに深いため息をつき、いつも閉め切りな窓を開けた。