ウシロスガタ 【完】

「んっ…?」



小走りに俺の元に駆け寄ってきた冷夏はホテルの入口で俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。



「一度でいいから、こうやって歩いてみたかったの♪」



俺より遥かに小さい冷夏は俺を見上げながらしっかりくっついていた。



「バカ!!可愛いんだよ!」



幸せそうに笑う冷夏になぜだか切なく感じた。



思えば……



こうゆう風に腕を絡ませ外を歩く事も許されない2人……



駐車場からホテルの入口が凄く短い距離に思えたのは俺だけなのであろうか。



“もし普通の恋愛なら……”



一瞬だけ横切った思いを必死に消そうと唾を飲み込んみ俺たちは無言のまま、



冷夏は俺にしっかり、しがみつきホテルに入った。




そして、俺は生まれて初めての未知の空間にまたしても足を踏みこんでいた。