ウシロスガタ 【完】

「翔クン……」
「冷夏……」



静かな車の中で、俺たちの声が重なり始めた。



「なに?」
「どした?」



また、同時になった言葉に、2人とも笑いが止まらずにいた。



「いーよ、冷夏から話しなよ?」


「翔クンから話してっ」



俺は、少しずつ鼓動が速くなって行くのを感じながら、深呼吸をしながら言葉にした。




「俺、行ったら間違いなく冷夏を求めるよ?」



「うん……」



「いいの?」



「うん」




お互い眼を合わせることなく、まっすぐ前を向いて話していた。




いやらしい気持ちなんかじゃなくて、



素直に冷夏を抱きたいって思っていた。




冷夏の全てを知りたい……



冷夏の全てが欲しい……




全部、冷夏の過去を知った上で、本気でそう思い始めた。




「冷夏はなにを言おうとしたの?」



「ううん、なんでもない!!」



「そんな事ねーだろ?なんだよ!!」



「なんでもないのっ!!」




そう言いながら、笑う冷夏になんの不審も抱かずに、俺はとうとうホトル街へと入って行った。