ウシロスガタ 【完】

存在を忘れられていた冷夏の車の横に、俺の車を停め、



冷夏は周りを気にしながら自分の車に乗り込んだ……




悲しい現実……。




分かっているのに、俺の口から漏れた大きなため息は、吐きだされてすぐに俺の中に戻って来ていた。





こんな気持ちは冷夏には分からないだろう




なぜだか、隣の車の中から笑顔で手を振る冷夏に、そんな問いかけをしていた。





今日もまた俺は冷夏の車の後ろに着いて行き、



現実に戻って行く冷夏を見送るのだろう……




そう思うとなんだか、とてつもない感情が湧いてきて、




俺の車の横から動き出し、帰って行こうとする冷夏の車の後ろにすぐに着いて行けない自分がいた。





俺の精一杯の反抗……




ギアをドライブに入れた俺は、ゆっくりとアクセルを踏み




右へ曲がって行く冷夏の車の反対方向にウインカーを出し、曲がった。




バックミラーに映る冷夏の車は一瞬だけブレーキランプが付いたが、どんどん俺から離れて見えなくなって行った。







小さな、小さな俺の反抗……






冷夏はどんな気持ちで帰って行ったのだろう……



そんな事が頭に過りながらも、旦那の居る場所へと戻って行く冷夏の事を考えると




俺の心の中は煮えくり返っていた。