ウシロスガタ 【完】

「翔クン……」


「冷夏……」



俺は冷夏の体に掴まり、一生懸命、怒りを押し殺していた。



冷夏は、そんな俺を優しい笑顔で見ていた。



俺はどんな顔をしているのだろう……



深い悲しみと傷を負った冷夏に、どんな表情を向けているのだろう……。




朝を知らせる光が、俺達を包む。




今日も暑い日を知らせる輝かしい光……。




さっきまでの雨が嘘のように止んでいて、俺はひとり夢の中を彷徨っている気がした。






「翔クン、立って……」



冷夏の言葉に、俺自身……


生ぬるいコンクリートに崩れ去っていた事を初めて知った。




差し伸ばしてくれた冷夏の手を、俺は握り



止まらない涙をぬぐった……





「冷夏、ごめんな……」




びしょぬれの冷夏の体は体温が低く、その冷たさがまた俺を悲しみに突き落した。