「いらっしゃいませ!!」
「いらっしゃいませ!!」



「お待たせしました。」



中に入った瞬間に現実の扉は閉められ、



俺達はボーイの後に着きながら、席へと向かった。



この同じ空間に冷夏がいる事は分かっている。



でも、俺には回りを見渡す余裕なんてなくて、中西の後に着いて歩くのがやっとだった。




「あっ!!!ごめんなさい!!!」



その瞬間に、間違いなく冷夏の声が耳に入った。




何がおきてるのか、それさえも分からず、



俺はやっと腰を下ろした。





“あっ…やべぇ……”




座った瞬間の問い面の席に冷夏の姿が目に入る。




冷夏はテーブルを拭きながら、俺に気づき苦笑いをした。





そんな冷夏の笑顔に俺は笑えなかった。




“なにやってんだろ、俺……”




自分の行動に少しだけ、後悔をしながらも




冷夏と客が気になり、なかなか目を放す事が出来ない。






さっきまで、俺の傍で笑っていた冷夏がまるで他人だった。